掲載日 : 2011年05月11日
2009 アバルト 500
フィアット500のアバルト版
「アバルト500」は新型フィアット500をベースに、2007年にフィアット傘下で復活した名門ブランド「アバルト」が仕立てた高性能モデル。アバルトはもともと、1950年代から60年代にかけて旧フィアット500のチューニングで名声を得たブランドであり、新型アバルト500は言わばその復活を象徴するモデルだ。
日本では2009年4月に、右ハンドル・5MT仕様から発売。価格は295万円で、標準ボディカラーはビアンコ・ガーラ(ソリッドの白)。さらに有償オプションとしてロッソ・オフィチーナ(ソリッドの赤)、ネロ・スコルピオーネ(メタリックの黒)、グリジオ・カンポボーロ(ソリッドのグレー)、ビアンコ・イリダート(パールホワイト)が用意された。半年後の10月には左ハンドル仕様が追加されている。
2009年12月には純正チューニングキット「エッセエッセ キット」を導入。これは最高出力を160ps、最大トルクを23.5kgmにアップする専用ECUやBMC製エアクリーナー、ローダウンスプリング、専用17インチホイール&タイヤ、高性能ブレーキパッド&ドリルドディスク等をセットにしたもの。取付対象は購入後1年未満かつ走行距離2万km未満のアバルト500に限られ、価格は取付費込みで46万2000円とされた。
2010年にはキセノンを標準化。「500C」も登場
2010年の6月にはプロジェクター式バイキセノンヘッドライト(ウォッシャー付)が標準装備となり、価格は4万円高い299万円となった。
10月にはフィアット500Cと同じ電動キャンバストップを備えた「アバルト500C」が登場。こちらは5速セミAT「アバルトコンペティツィオーネ」となり、ボタン式シフトセレクターやパドルシフトを装備。この500Cのみ、最高出力は5psアップの140psとなった。価格はアバルト500より40万円高い339万円で、ボディカラーには2トーンの「ビコローレ」も用意された。
さらに11月には、アバルトとフェラーリのコラボレーションモデルとして「アバルト 695 トリブート フェラーリ(Tributo Ferrari)」が世界限定1696台、日本限定150台で発売された。ボディタイプはクーペのみで、最高出力は180ps、最大トルクは25.5kgmまでアップ。変速機は「アバルトコンペティツィオーネ」のみで、価格は569万5000円とされた。(2011.5)

「小で大を制す」精神を体現
小粒ながらチューニングカー然とした雰囲気は、1960年代のアバルト695SSあたりを彷彿とさせるもの。インタークーラーを収めた大型フロントバンパー、大型ルーフスポイラー、サイドスカート、ディフューザー付リアバンパー、2本出しマフラー、16インチアルミホイール、赤いブレーキキャリパー、サソリのマーク等々の仰々しいパーツが、可愛らしいフィアット500の印象を一変させている。
大型バンパーを装着した分、全長はベース車のフィアット500より110mm長いが、それ以外のサイズは同じ。特に全幅は5ナンバー枠(1700mm以下)までかなり余裕を残した1625mmしかないし、2300mmのホイールベースは今どきの軽自動車よりも短い。昔からアバルトの魅力である「小で大を制す(小さなクルマで大排気量車に勝つ)」痛快さを予感させるデザインだ。
専用メーター、D型ステアリング、アルミ製シフトノブ
インテリアは、カジュアルなフィアット500と異なり、黒ベースのパーツが増えて硬派かつスポーティに変身。アバルト専用装備は、下部がフラットなD型シェイプのレザーステアリングホイール、ブーストメーター(過給圧計)&シフトアップインジケーター、レザースポーツシート、アルミ製シフトノブ、アルミ製スポーツペダル等々。メーターの文字盤も白から黒に変更され、ずいぶん見やすくなっている。
レザーシートが標準。エアバッグは計7個
フロントシートは基本的に赤のレザーで(ボディカラーが赤なら、黒レザー)、適度にホールド感がある。ステアリングのテレスコ(伸縮)が出来なかったり、ペダルレイアウトが少し窮屈だったりはするが、すぐに慣れると思う。
深紅の前席に対して黒となるリアシートは、座面の短さが少し気になる。同じシート形状のフィアット500では感じないことなので、単に素材の違い(ファブリックとレザー)による感覚的なものだろう。またセミバケットタイプのフロントシートが前方視界を遮るため、閉所感も少しある。
安全装備は充実していて、エアバッグはフィアット500と同じように、前席正面が2個、前席サイドが2個、前席ウインドウが2個、運転席ニー(膝)が1個と、計7個を標準装備。同クラスの欧州車と比べても、衝突安全対策はかなり入念だ。
アバルトらしさが弾ける
試乗車は導入初年度の2009年式。初年度登録から1年半ほどのワンオーナー車だが、走行距離は1万5000kmと少し多め。コンディションは全体的に良好で、価格は新車時の295万円に対して249万円だった。
アバルト500に乗るのは今回で3回目だったが、アイドリング時のくぐもったサウンド、特に車外で聞くグロロロ・・・・・・といった低音は凄みがあって、相変わらずワクワクする。ちょっぴり懐かしい「チューニングカーの音」だ。
試乗車の動的コンディションは新車に見劣りすることはなく、走った印象もデビュー当時とまったく同じだった。クラッチペダルやステアリングこそ少し重めだが、神経質なところはまったくなし。発進はイージーだし、マニュアルシフトもコツ要らず。トルクも太いので、その気になればズボラな運転も許される。見かけによらず小回りは苦手だが、普通にマニュアル車に乗れる人なら、緊張感なしで運転できると思う。
それでも、ダッシュボードのスポーツスイッチを押し、アクセルを踏み込むと少し様子が違ってくる。一瞬のターボラグがあった後、かんしゃく玉が弾けるような加速が始まり、若干のトルクステアを出しながら、1速、2速、3速と一気に吹け上がる。直進安定性はESPなどの電子制御システムが保ってくれるが、意図的に「危うさ」を残しているあたりがアバルトらしくて面白い。
サスペンションが硬めだったり(ストロークも短い)、ホイールベースが短かかったり、ということで、舗装が悪いところではヒョコヒョコした動きが続くが、ボディの剛性感はしっかりしている。MINIクーパーSみたいにサーキットでも通用しそうな高性能シャシーではないが、飛ばさなくても「攻めてる」感じが楽しい。このあたりのエンターテイナーぶりは、まさにイタ車らしいところ。
年式・車名 2009 Abarth 500
形式 ABA-312141
寸法 全長3655mm×全幅1625mm×全高1515mm
ホイールベース 2300mm
車重 1110kg
駆動方式 前輪駆動(FF)
エンジン 1368cc 直列4気筒DOHC・4バルブ・ターボ
最高出力 135ps(99kW) /5500rpm
最大トルク 18.4kgm (180Nm)/ 4500rpm
最大トルク(スポーツスイッチ使用時) 21.0kgm(206Nm)/ 3000rpm
トランスミッション 5速MT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 35L
10・15モード燃費 -km/L
タイヤ 195/45R16
最小回転半径 -m
発売時期 2009年4月
当時の新車価格 295万円
試乗車スペック
初年度登録 2009年9月
試乗日 2011年4月
販売価格 249万円(消費税込み)
走行距離 1万5000km
ボディカラー ビアンコ・ガーラ
備考 ワンオーナー、新車保証残りあり
AIS評価点 4.5点
今のところ新車もあり。500CのセミATも
今のところアバルト500は発売から2年しか経っていないため、新車とUカーとの価格差は少ない。新車にはメーカー保証がフルに3年間(10万kmまで)付くことを踏まえた上で、自分なりの価値観でお得と思えるUカーを選びたいところ。走行距離に関しては、それほど気にしなくていいだろう。個人的にはこのフィアット500系のシャシー、10万km走っても、要の部分はぜんぜんへたらないような気がしている。
仕様については、2010年後半からプロジェクター&バイキセノンヘッドライトが標準装備になり、より明るく、見た目の質感も高まっている。また途中から追加された左ハンドル仕様は、日本だと不便なこともあるが(駐車チケットがとりにくいとか)、運転ポジションは右ハンドルよりしっくりくる可能性があるし、よりイタ車っぽくて面白いはず。
今のところアバルト500は5MTのみだが、オープンモデルの500CはセミAT(アバルトコンペティツィオーネ)になる。「アバルトならマニュアルだろう」と思いがちだが、実際500Cに乗ってみると、楽しさは5MTと大差なく、セミATならではの面白さもある。またフェラーリのようなボタン式シフトセレクターやパドルシフトも楽しい。出来れば新車があるうちに、正規ディーラー(全国に4店舗しかないが)で一度試乗してみるといいだろう。
「フィアット500 vs. アバルト500」なら?
中にはフィアット500とアバルト500で迷う方もいるだろう。フィアット500も実にいいクルマで、アバルトにはない魅力がたくさんある。例えばキュートなスタイル、ホッとできるインテリア、気持ちが明るくなるグラスルーフの設定(アバルト500にないのが残念)、穏やかな乗り味、そして輸入車でナンバー1を争う燃費の良さなどだ。燃費に関しては、インターネットで収集したユーザーの実燃費情報で決まる「e燃費アワード」で、2009年度は輸入車1位、2010年度は2位に入っている。
つまりこの両者、キャラクター的には正反対で、どちらを選ぶかはまさにクルマ人生の大きな分かれ道。けっこう難問だが、あえて一つアドバイスするなら、クルマに乗る時間が長い人ならフィアット500を、たまに乗るだけならアバルト500がいいと思う。フィアット500ならずっと一緒にいても疲れないし、一方のアバルト500なら遊園地の乗り物のようにドライバーをスカッと楽しませてくれるはずだ。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS










