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Uカー試乗記

Uカー試乗記

掲載日 : 2011年07月11日

1970 ボルボ 1800E

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1960~73年に販売された2ドアクーペ&スポーツワゴン

手前は1971年に登場したスポーツワゴン「1800ES」
(写真:Volvo Car Corporation)

ボルボの「P1800」シリーズは、1960年に発表、1961年に発売された同社初の量産スポーツカー。高品質と安全性に加えて、イタリアのフルア社がデザインした流麗なスタイリングを備えるという点で、ボルボの中では異端とも言えるモデルだ。構造的には当時の120シリーズ(アマゾン)譲りのパワートレインを搭載した2+2のFRモデルである。

1961~63年の初期モデルは1778cc・直4・OHVエンジン「B18B」を搭載。最高出力は100ps、最大トルクは15kgmを発揮し、最高速度は166km/h。トランスミッションは3MTが標準で、4MTがオプションだった。当時、急成長中だったボルボ社にはスウェーデンの自社工場でP1800を生産する余裕がなく、ボディパネルの生産は英国のプレスト・スチール社に、最終組立は英国のスポーツカーメーカーであるジェンセン社に委託された。

流麗なスタイリングで人気を得たP1800だが、英国製ボディの生産品質に問題が多かったため、1963年には生産をスウェーデンに移管。車名は「P1800」から、スウェーデン製であることを示す「1800S」に変更された。同時に最高出力は108psとなり、1965年には115psに向上。1968年にはエンジンを2リッターの「B20B」(118ps)に換装している。

なお、ボルボの1800シリーズは一般的に初期モデルの車名のまま「P1800」と呼ばれるが、当ページでは混乱を避けるため、総称する場合は「P1800シリーズ」と表記する。

1969年にインジェクションの「1800E」、1971年に「1800ES」が登場

今回試乗したのはインジェクション仕様の「1800E」

1969年に登場した「1800E」は、燃料供給システムをボッシュ製のインジェクション(電子制御燃料噴射)とした「B20E」エンジンを搭載。最高出力は120~135ps(仕向け地によって異なる)、最大トルクは17.0kgmに向上した。この1800Eの特徴は、格子部分をメッキからブラックに変更したフロントグリル、リアフェンダーに追加された室内換気用のエアダクト、ハブキャップ付スチールホイールに換えて採用されたマグネシウム風デザインのアルミ製ホイールなど。またリアブレーキはディスク化され、4輪ディスクブレーキとなった。今回の試乗車は、まさにこの1800Eである。1970年にはボルグワーナー製の3ATも新設定された。

1971年8月にはボディ後半をデザインし直した2ドアスポーツワゴン「1800ES」を追加。実用性の高さと斬新なデザインによって、クーペに劣らない人気モデルとなった。このリアデザインは後にボルボC30のモチーフともなっている。なお1971年8月以降のモデルは、クーペの1800Eも含めて標準ホイールがスチール製となり、ボンネット上のエンブレムは長方形となっている。

1970年代に入っても人気の衰えなかったP1800シリーズだが、1972年6月にはクーペの1800Eが生産終了。1800ESは米国の衝突安全基準に対応するため、衝撃吸収バンパーや側突対策のドア内蔵式ビーム等を装備して生産を継続したが、翌1973年6月に生産終了となった。

P1800シリーズの生産台数は、クーペ(1961-72年)が3万9777台、1800ES(1971-73年)が8078台。合計4万7855台(※)となっている。

 

【出典】
■「VOLVO 1920年代から1990年代の車」日本版(ビョン=エリック・リンド著、Volvo Car Corporation刊、1990年)

■「Volvo Car Corporation 1927-2003/04」(Volvo Car Corporation刊)

【外部リンク】
スウェーデン ボルボ P1800 クラブ(英語/スウェーデン語)

※生産台数は上記「Volvo Car Corporation 1927-2003/04」による。他に4万7462台、4万7492台の説がある。


 

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ボルボ史上、最もスタイリッシュ

試乗車のボディカラーは1969年に新設定された「サファリイエロー」

クーペに限れば、スタイリングは1961年の「P1800」から、途中の「1800S」を経て、最終の「1800E」までほぼ同じ。フルア社のデザインは絵に描いたようなイタリアンルックで、特に顔つきは同時代のフェラーリ250GTとよく似ている。ただしボディサイズは全長4.4メートル、全幅1.7メートル、全高は1.3メートル弱と小さく、5ナンバーサイズに収まる。排気量も2リッター未満なので、文字通り5ナンバー登録だ。

デザイン面で特にユニークなのが、ボディサイドの「J」型キャラクターライン。当初は横のメッキモールもJ型だったが、1966年以降はメッキモールだけ水平にされ、プレスラインしか残らない。それでもこれが1800シリーズに欠かせない個性となっている。また1950年代のアメ車を思わせるテールフィンも良い意味でノスタルジックで、チャームポイントの一つ。どの角度から見てもカッコいいという点では、ボルボ史上、最もスタイリッシュなモデルだろう。

 
テールフィンが1950年代にデザインされたことを物語る。リアフェンダーのエアダクトは室内換気用
1969年から71年までは軽量アルミホイールを標準装備
1968年までフロントグリルはメッキだったが、1800Eでは格子部分がブラックとなる

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ボルボらしく安全装備は時代を先取り

オーディオ等を除けば、内装はほぼオリジナル。ダッシュ下部に見えるのは「クーラー」

メーターが横一列に並ぶデザインはP1800シリーズで共通だが、「1800E」ではダッシュボードが新デザインとなり、ウッド調パネルや新型スイッチも新採用。センターコンソールのグローブボックスもこの年式からだ。ただし、大径の3本スポークステアリング、ヘッドレストなどは、1966年頃から採用されている。

試乗車の内装色はブラックだが、当時の広報写真やカタログを見ると、ブラウン、赤、ベージュなどもあったようだ。着座位置は低めだが、室内は広々としており、FR車の割に足もとへの張り出しもない。シートクッションは分厚く、座り心地は良好。ボルボらしく、当時すでに3点式シートベルトを装備してい点も心強い。

 
サブメーターは左から、燃料計、油圧計、時計。全てスミス製
メーターは全て英国のスミス製。中央上は油温、下は水温
パワーアシストがないため、ステアリング径はかなり大きめ
 
ドアハンドルの作りは非常によく、操作もしやすい
サイドブレーキは運転席のサイドシル側にある
走行風を取り入れる三角窓。1970年代に入ると消滅してしまったアイテム
 
ヘッドレスト、3点式シートベルト、ランバーサポート調整を備える
新車のようにきれいな後席。座り心地はいいが、大人だと頭が天井につかえる
トランクにはスペアタイヤ(標準サイズ+アルミホイール付)が鎮座する
 

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いきなり旧車の洗礼を受ける

気温35度の中、オーバーヒート知らずで走る1800E

試乗した「1800E」はシャシー番号から1970年製と思われるもの。1969年からのインジェクション仕様で、4輪ディスクブレーキやアルミホイールを標準装備したモデルだ。

1970年当時、日本での新車価格は253万円。当時246万円だったトヨタ2000GTと同じくらい高価だったわけだが、ポルシェ911が当時400万円以上もしたことを思うと、輸入スポーツカーとしては手頃な値段だったとも言える。なお、作られてから41年経つこの車両の価格は消費税込み248万円。当時からあまり値段が変わっていないのが面白い。

屋内に展示されていたため、バッテリーは弱っていたが、ハンディタイプのジャンプスターターをつなぐと、エンジンはあっけなく始動。ひとまずオートプラネット名古屋の谷川氏が試運転し、特に問題なしとなった。

とはいえ取材担当者は、この時代のボルボ車に乗るのが初めて。念のため注意点を聞くと、「旧いクルマなので、困った時は押したり引いたりして、うまく行くところを探してください」とのこと。そもそもこのP1800シリーズ、頑丈で壊れないことでは有名なので、もともとそんなに心配はしていなかったのだが。

ところが谷川氏が去った後、イグニッションを回そうとすると・・・・・・これがビクとも動かない。押しても引いても、なだめてもダメ。「押したり引いたりとは、このことか」とこの時に気付いたのだが、さてどうしたものか。こういう場合、力づくで回すのは厳禁だ。

しばし悩んだ後、ひょっとしてと思いつつ、ピットサービスでワコーズの潤滑油を借り、鍵穴にプシュッと一吹き。するとあれほどビクともしなかった鍵が、あっけなく回った・・・・・・。なるほど、ヴィンテージカーとは、こういうものか。

ウワサ通りの低速トルク型

ボッシュのインジェクションが付いた1800Eのエンジン。手前が吸気側だ

車検が切れていたため、試乗はオートプラネットの敷地内で行った。発進はまったくもってイージー。意外に軽いクラッチペダルを徐々にリリースしてゆくと、アイドリングのままスルスルッと走り出す。まさにエンスト知らず。ZF製の4速MTはフルシンクロで、ゲート感も明瞭。ミスシフトはあり得ない。

2リッター直4・OHVエンジンは「2.5リッターくらい?」と思うほど低速トルクが粘り強い。車重1130kgのボディを軽々と走らせる。この穏やかな力感は、DOHCやOHCでは得られないOHV独特のもの。1800シリーズはウワサ通りの低速トルク型だ。

一方、そんな特性ゆえ、高回転はまったくの苦手。早くも4000回転で重々しく、最高出力を発揮する6000回転まで回すのは、かなり気が引ける。飛ばすよりも、低い回転数でユルユル走るのが気持ちいい。

ウワサ通りステアリングは重く、信頼性は高そう

ステアリングが重いため、駐車時の切り返しには汗をかく

もちろん今から40年前のクルマだけに(基本設計に至っては50年前だ)、乗りやすいばかりではない。中でも気になるのが、パワーアシストのないステアリング、いわゆる「重ステ」。据え切りはもちろん、走りながらのハンドル操作でもちょっとした力仕事で、久々に「手アンダー」という言葉を思い出した。腕力に自信がない人は、きっと次の日に筋肉痛になると思う。

1800Eのブレーキはサーボ付の4輪ディスクブレーキだが、現代のクルマほどカチッとしたタッチはなく、効きもそれなりなので、最初だけ慣れが必要。ただ本来のコンディションなら、もう少しよく効くのかもしれない。

総じてステアリングの重さ、低めの着座位置による見晴らしの悪さは少し気になるが、マニュアル車を普通に運転できる人なら、割とすんなり乗れるはず。何より特筆すべきは、やっぱりそのタフさ、信頼性の高さだろう。当日は最高気温が35度に達したが、水温計の針は中立付近から少し振れた程度で、オーバーヒートの兆候はほとんど無かった。むしろ取材していたスタッフの方がオーバーヒート気味だった、というのが正直なところ。

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年式・車名  1970 Volvo 1800E
形式  -
寸法  全長4400mm×全幅1700mm×全高1285mm
ホイールベース  2450mm
車重    1130kg
駆動方式  FR
エンジン  1986cc 直列4気筒・OHV・2バルブ・電子制御燃料噴射
最高出力  120~130ps(88~95kW) /6000rpm ※最高出力は仕向地によって異なる
最大トルク  17.0kgm (166Nm)/ 3500rpm


トランスミッション  4速MT
使用燃料/容量  プレミアムガソリン / 45L
10・15モード燃費  -km/L
タイヤ      165HR15(試乗車のタイヤは165/80R15)
最小回転半径   5.0m
発売時期     1969年8月(1800E、※スウェーデン本国での発売)
当時の新車価格  253万円(※日本国内での1970年当時の価格)


試乗車スペック

初年度登録   1970年(推定)
シャシー番号  31899
試乗日     2011年6月
販売価格    248万円(消費税込み)
走行距離    不明
ボディカラー  サファリイエロー
備考      2003年に国内新規登録、整備渡し・保証なし

 

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最も頑丈な1960年代製スポーツカー

オートプラネット名古屋に並ぶ今回の1800E。過去に1800ESも在庫していた

1960年代のスポーツカーの中で、P1800シリーズがユニークな点を挙げるとすれば、主に以下の二つだろう。一つはデザインの良さ、もう一つはメカニズムがボルボ車そのもので、高性能ではなく、高品質、耐久性、信頼性、安全性を追求している点だ。原稿を書くにあたって今回参考にしたビョン=エリック・リンド氏の著書にも次のようにある。

「1800は極めて頑丈な車であり、どんな乱暴なドライバーの要求にも耐えられるエンジンを搭載していた。(中略)しばしば品質が欠如していた多くの競合車より、現存している車両台数は1800の方がはるかに多いのが事実だ」。

というわけで、1961年~63年の英国製モデルを除けば、P1800シリーズの信頼性は定評のあるところ。エンジンは過剰品質と言えるほど耐久性に振った仕様。ボディは全て防錆処理され、車体下面のアンダーコートも分厚い。さらに同時代の120シリーズ同様、リペアパーツも比較的豊富で、海外には有力オーナーズクラブも存在する。

中でもおすすめは、インジェクション仕様の「1800E」および「1800ES」だ。市場に出てくるのがほとんどこの二つであるのも、それだけ良い状態のものが多いということだろう。なお「1800E」の生産台数は1969年から72年までの約9400台、「1800ES」は1971年から73年までの約8000台だ。

オートプラネット名古屋の谷川氏に聞く

ヴィンテージカーコーナーの全景。手前は1952年 BMW 327/2 カブリオレ

輸入車がところ狭しと並ぶオートプラネット名古屋の一角に、自動車博物館と見紛うようなコーナーがある。それがオートプラネット名古屋のヴィンテージカーコーナーだ。この日も、戦前から続くBMWの名車327、そしてメルセデス・ベンツの190SL、非常に珍しいNSU スパイダー(世界初のロータリーエンジン搭載車)など貴重なクルマがずらりと並んでいた。基本的には全て販売車両だ。

今回はオートプラネット名古屋の谷川マネージャーに、ヴィンテージカーを購入する際の注意点や心構えなどを聞いてみた。


--オートプラネット名古屋で販売するヴィンテージカーの保証や整備内容を教えてください。

「ほとんどのクルマは整備済み車両なので、現状渡しではなく整備渡しとなります。年式からみて【保証なし】販売になりますので、ノンクレーム・ノンリターンが原則です。アメリカやイギリスで買い付けを行い、日本で新規登録・車検取得を行ってから、お渡しすることもあります」

--購入時に知っておきたいことや心がまえは。

「旧いクルマは年式から見ても、さまざまな部品が年月を経て、老朽化しています。経年劣化した部品をどのように直したり交換したりするのか? それを考えるのもヴィンテージカーを所有することの楽しみの一つです。また乗って行く上で『20年、30年前の車両だから多少のオイル漏れは当たり前・・・・・・』、『オイルは継ぎ足しながら乗るもの』といった達観した考え方も必要です」

「またエアコンやクーラーが付いている車両でも、壊れたら部品の入手が困難な場合もあります。エアコンなどの電装品も消耗品で、そもそもクルマ自体が機械である以上、車両全体が消耗品です。それを機関や外装なども含めて、『好きなクルマに手を入れながら、直しながら乗ることが楽しみ』と思えることが肝要です」

 
こちらは1957年 メルセデス・ベンツ 190SL(798万円)。奧は1980年 MGミジェット(168万円)、そして1954年 オースチンヒーレー100/4(680万円)

--ヴィンテージカーの維持には、いくらくらい掛かるものでしょうか。

「新車でも壊れるクルマはありますし、ヴィンテージでも壊れないクルマはあります。ただし、ヴィンテージは構造がシンプルなので、不調になっても腕利きのメカニックに頼めば、安く直るケースもあります。エンジンやミッションなどが完全に壊れるようなことがなければ、年間の維持費はそれほど心配はありません。ただし壊れてしまったら時間とお金がかかるので、ギリギリの予算で購入するのではなく、ある程度の余力を持っておきましょう」

--オートプラネット名古屋でも修理は可能ですか?

「オイル交換や車検整備などは可能ですが、絶版部品や大掛かりな整備が必要な場合は、クラシックカー専門の整備工場も適宜ご紹介させて頂きます」

--ヴィンテージカーは通勤で使えますか?

「クルマによって、非常にデリケートな車両もあれば、丈夫でイージーな車両もあります。『エンジンが掛からないので、今朝は遅れて出社します』が通用しない仕事ならば、信頼できるスペア車両が必要です。私は個人的に旧い車を常に使っていますが、日々のメンテナンスをやっているので、故障が理由の遅刻は10年間に2度しかありません」

 

--最後に、今回のボルボ P1800はどんなクルマでしょうか。

「クルマ好きの間でもP1800は知名度がやや低いクルマかもしれませんが、その魅力はまず、第一印象がスポーツカーっぽくてカッコイイ!ということですね。また日本では動態保存されているクルマが意外に少ないようですが、実際には丈夫に作られており、イージーに乗れる1台だと思います。また車両価格もそれほど高くなく、総じてリーズナブルに乗れることも魅力ですね。P1800に限らず、『ヴィンテージカーに一度乗ってみたい!』という方は、ぜひお気軽に一度ご相談いただければと思います」


 

Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS

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