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Uカー試乗記

Uカー試乗記

掲載日 : 2011年09月01日

2003 スマート ロードスター

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初代スマートから派生した軽量オープンスポーツ

今回試乗した2003年モデルのスマート ロードスター

「スマート ロードスター」は、初代スマート(1998-2007年)から派生した軽量小型のオープンスポーツカー。鋼鉄製フレーム「トリディオンセーフテセル」、樹脂製アウターパネル、直列3気筒698ccターボエンジン、6速セミAT、RR(リアエンジン・リア駆動)といった要素はスマート譲りだが、基本的にはほぼ専用設計の極めてユニークなモデルだ。

ボディタイプは2種類あり、一つは電動スライド式の幌を備えたタルガトップの「スマート ロードスター」、もう一つは同じタルガトップながら、幌の代わりに脱着式ハードトップを装備し、ボディ後部をファストバッククーペタイプに改変した「スマート ロードスター クーペ」となる。

販売期間は2003~2006年の4年間

こちらは「スマート ロードスター クーペ」。トランクリッドから上がガラスで覆われ、ファストバックスタイルになる
(写真:メルセデス・ベンツ日本)

デビューは2002年秋のパリ・モーターショーで、欧州では2003年春、日本では同年9月に発売された。当初の新車価格はロードスターが255万円、クーペが278万円だった(当時の表記に従い、いずれも消費税抜き)。

2004年には最高出力を101psに高めた高性能モデル「スマート ロードスター BRABUS」(限定30台)と「スマート ロードスター クーペ BRABUS」(限定20台)を発売。価格はそれぞれ消費税込みで343万円、363万円だった。なおクーペ BRABUSの方は2006年にも限定30台で再販されている。

2005年にはロードスターおよびクーペの特別仕様車「リミテッド」を計40台限定で発売。ブースト計、水温計、スマートBRABUS社製スポーツステアリング、カーボン調トリム、DVDナビ、フルレザーシート(ロードスター)、電動ソフトトップ(クーペ)等を標準装備していた。

2006年には最終モデルとして再び「リミテッド」を限定30台(ロードスター23台、クーペ7台)で発売。装備はクーペ用の電動ソフトトップを除いて前年とほぼ同じ内容だった。国内ではこれをもって販売を終了した。

 

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ライトウェイトスポーツの未来形

ボディカラーはロードスターがシャインイエロー(試乗車)、スパイスレッド、スターブルーメタリックの3色。クーペがジャックブラック、スターブルーメタリック、シャンパンリミックスメタリックの3色

ボディサイズは全長3430mm×全幅1615mm×全高1205mm。全長こそ軽自動車並みだが、全幅はボリューム感たっぷりで、背はスーパースポーツ並みに低いという具合に、スタイリングはライトウェイトスポーツの王道をゆく。

一方、小径ライトを4つ並べたフロントまわり、シルバーに塗られたトリディオンセーフティセル、衝撃に強い樹脂製アウターパネル(試乗車で言えばイエローの部分全て)、独創的なタルガトップ構造などは斬新かつ未来的で、これが独自の魅力になっている。スマートのコンポーネントを流用するというのが開発時の大義名分だったと思うが、少なくともエクステリアはほぼ専用設計であり、このボディだけでもコストの掛かり方は半端ではなかったと思われる。

 
電動スライド式の幌をキャビン後方に引き込んだ状態。エンジンはリアトランクのすぐ下
サイドバーを外した状態。ロードスターのタイヤサイズは185/55R15。クーペは205/45R16になる
下段のプロジェクターがロービームで、上のマルチリフレクターがハイ。バンパー内はポジションライト

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エリーゼに迫る低さ。ただし快適性は高い

パドルシフト(ステアリング連動型)は標準。ステアリングの調整機能やシートリフターはないが、ポジションはまずまず決まる

多くのパーツをスマートと共有するインテリアだが、着座位置は量産スポーツカーで最も低い部類で、ロータス エリーゼに迫るレベル。ただ、サイドシルはエリーゼよりはるかに低いので、慣れれば乗り降りは難しくない。また内装は樹脂やカーペットで覆われているので、室内の雰囲気も文化的。

足先が前輪のホイールハウスを避けるように車体中央側に向くところもエリーゼ的だが、肩のまわりには余裕があり、国産の軽スポーツのような狭苦しさはない。強化スチール製モノコック構造のシートは、座り心地やホールド性に優れるだけでなく、衝突時に衝撃を吸収して乗員を守るという極めて凝ったもの。開発陣の志を象徴する部分だ。試乗車のシートは標準のレザー/ファブリックのコンビだが、オプションでフルレザー(10万円)も選択できた

 
200km/hまで刻まれた速度計、6000回転からレッドゾーンの回転計はロードスター専用
幌の開閉スイッチやトランクオープナーはセンターに配置。オーディオはCDチェンジャー対応
シフトレバーとキー差し込み口はスマートと同じ。奧に見えるのはスライド式のドリンクホルダー&CDホルダー

電動ソフトトップを開ければ、タルガトップに変身

幌を後方に引き込み、さらに左右のサイドバーを外した状態

電動スライド式の幌は、言ってみればキャンバストップのようなもの。電動シャッターのようにキャビン後方に引き込まれ、約10秒で収納される。この際、「メリメリメリ」という作動音が発生するが、これは新車時からそう(「仕様」です)。幌に折り癖がついていると途中で引っかかることがあるが、そんな時は折り癖を直してから閉め直すと良い。

さらにルーフ左右のサイドバーをレバー操作で外し、フロントトランクに収納すれば、いわゆるタルガトップの状態になる。慣れれば2、3分で出来るはず。また裏技としては、クーペ用の2分割ハードトップをサイドバーの代わりに装着することも可能だ。3層構造のポリウレタンフォーム製で(片側5kg)、当時はオプション(19万8000円)でも販売されていた。

 
サイドバーはロックレバーを90度反転すると外れる。慣れれば難しくない
電動スライド式の幌はリアウインドウを通り越して、リアバルクヘッド上部に折り畳まれる
オープンカーゆえボンネットオープナーはグラブボックス内に配置
 
トランク下のパネルを外せば、直3ターボエンジンが現れる
ロードスターのリアトランクは最小限。荷室容量は前後合わせてロードスターが145L、クーペが248L
フロントトランクは大容量で、上部にルーフサイドバーを収納出来る


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速くはないが、最高に楽しい

エリーゼやマツダ ロードスターのように振り回せるクルマではないが、走らせる楽しさはそれに引けをとらない

試乗したのは2003年登録のロードスター。すでに8年落ちで、走行距離は6万4500kmだが、外装コンディションはとてもよく、アルミホイールにはキズ一つなし。走行距離や年式の関係で、保証なし・整備渡しとなるが、販売価格は新車時の267万7500円に対して何と105万円だ。

アクセルを踏み込めば、アクチュエーターが上手に半クラッチを当ててスムーズにスタート。6速セミATのギアボックスは基本的に初代スマートと同じで、やや意のままにならない感はあるが、そこはロードスターに標準装備のパドルシフトを駆使してカバーしたい。シフトアップ時には失速感が生じやすいが(特に1→2速時)、アクセルを一瞬抜けばスムーズになる。

6速ギアはまるでオートバイみたいなクロースレシオ。1速はクラッチを保護するためか極端に低く、そこからすぐに2速、そして3、4、5速と立て続けにシフトアップしてゆく。0.7リッターの直3ターボエンジン(最高出力82ps/5250rpm、最大トルク11.2kgm/2250-4500rpm)はパワーバンドが思いのほか狭く、上も6000回転で自動シフトアップしてしまう。その度にターボの過給圧が抜ける時の「ピュルルルル」という口笛のような音が響くため、ブォーン、ピュルルルル、ブォーン、ピュルルルルが連続する。加速はまったく大したことないが、WRCのインカー映像みたいで何だか妙に楽しい。

クイックではないもの、操舵フィールもいい

6速セミATで矢継ぎ早にシフトアップする加速が楽しい。最高速(発表値)は180km/h

電動パワステの操舵フィールも、素晴らしく気持ちいい。ステアリングのギア比がスローだったり、ステアリング径が37センチと大径であるなど、直進安定性を重視したところはあるが、軽やかで正確なステアリングがそれを帳消しにしてくれる。低速コーナーではステアリング操作とブレーキングで曲げるタイプだが、中・高速コーナーでは微妙なコントロールでクルマの一挙手一投足を味わう、そんな上質な操縦性が楽しめる。これはもちろん、低重心、ワイドトレッド、ロングホイールベース(エリーゼ+60mmの2360mmもある)、そして高剛性シャシーの成せる技だ。

そして何より惚れ惚れするのがエリーゼ並みの低い視点から見る、フロントフェンダー左右の盛り上がり。どれだけ見ても見飽きない眺めで、もうこれだけでこのクルマを手に入れたくなってしまう。

快適性も高く、ロングドライブも可能

乗車は前オーナーが換えたものか、溝のしっかりあるBSプレイズを履いていた

ブレーキタッチはややスポンジーだったが、これは新車時からのもの。効きは十分で、フル制動時の姿勢も非常に安定している。もちろんESPは標準装備。ちなみに車重はこのロードスターで830kg(クーペは850kg)。これはエアコン装備のエリーゼと大差なく、初代ユーノス・ロードスターより100kg以上軽いという数値。しかもスマート ロードスターの場合は単に軽いだけでなく、低くて、小さくて、シッカリしている、という感覚が伴う。

信じられないかもしれないが、乗り心地も抜群にいい。普通のスマートにあるピッチングもなければ横揺れもなく、滑るように走る。またターボの消音効果のせいか、エンジンを起因とするノイズや振動も少ない。快適性に関しては普通のスマートや国産の軽スポーツを明らかに上回るレベルで、その気になれば高速道路を使ってのロングドライブも楽しめそう。ちなみにエアコンもよく効く。

今回は主にオープンで走ったが、タルガトップゆえに風の巻き込みは最小限で、高速域でも快適に走行できた。クローズド時の後方視界もいいので、オープンカーが初めての人でもすんなり運転できると思う。

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年式・車名  2003 smart roadster
形式  GH-452434
寸法  全長3430mm×全幅1615mm×全高1205mm
ホイールベース  2360mm
車重    830kg
駆動方式  RR(リアエンジン・リア駆動)
エンジン  698cc 直列3気筒SOHC・ターボ
最高出力  82ps(60kW) /5250rpm
最大トルク  11.2kgm (110Nm)/ 2250-4500rpm


トランスミッション  6速セミAT
使用燃料/容量  プレミアムガソリン / 35L
10・15モード燃費  18.4km/L
タイヤ      185/55R15
最小回転半径   5.1m
発売時期     2003年9月
当時の新車価格  255万円(2003年モデル、消費税抜き)


試乗車スペック

初年度登録   2003年11月
試乗日     2011年8月
販売価格    105万円(消費税込み)
走行距離    6万4500km
ボディカラー  シャインイエロー
備考      保証なし・整備渡し
AIS評価点    4点

 

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耐久性が高く、経済的な21世紀型ライトウェイトスポーツ

オートプラネット名古屋に並ぶスマート ロードスター

今回試乗して一番感心したのは、8年落ち、走行6万4500kmにもかかわらず、ボディの剛性感が新車時と比べて、まったく色褪せていないことだった。このヘタリ感の無さは、この価格帯のオープンモデルではあり得ないレベル。ひょっとすると空冷時代のポルシェ911以上かもしれない。

その要因の一つがトリディオンセーフティセルにあるのは間違いない。本来この鋼鉄製の専用フレームは、最小限のボディサイズで高級車並みの衝突安全性を実現するためのものだが、結果としてスマート ロードスターは30万km走ってもビクともしそうにない超過剰品質のクルマになってしまった。おそらくこのトリディオンセーフティセルと樹脂製のアウターパネルだけで、目標とする車両原価を超えているのではないだろうか。

約4万3000台と言われるスマート ロードスターの累計生産台数は決して少なくないが、これほど贅沢な作りのクルマを輸出先の日本市場ですら300万円未満で販売したのだから、売れば売るほど赤字だった、と言われるのも無理のない話だろう。

 

また試乗した車両の場合、オーバーホールの有無は確認できなかったが、とりあえずエンジン本体、セミAT、電子制御クラッチ等のフィーリングは新車時と差がなく、基本設計そのものはかなり耐久性に振っているのではないか、という印象を受けた。このあたりは、なるほど確かにメルセデス・ベンツ的かもしれない。

というわけで今回のスマート ロードスターは、Uカー試乗記始まって以来、最高にマニアックで、最高にお買い得な一台。インターネットでざっと中古車を検索してみても、相場はだいたい200万円前後で、安くても150万円くらい。もちろんクーペやBRABUS、2005年以降のリミテッドを探すのもアリだが、いかに走行6万kmオーバーで整備渡し・保証なしとはいえ、105万円は絶対に安いと思う。Uカーの場合、掘り出し物はない、というのが原則だが、今回ばかりは例外としたい。

 

Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS

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