掲載日 : 2011年11月01日
2009 フォルクスワーゲン ティグアン スポーツ&スタイル
ゴルフベースのコンパクトSUV
「ティグアン」はゴルフおよびパサートをベースに開発された5人乗りのコンパクトSUV。コンパクトなボディ、ワゴンのような積載性、スポーティな走り、悪路走破性を兼ね備えたオールマイティなモデルだ。ティグアンという車名も、オンロードでは虎(ドイツ語でティーガー)のように俊敏、オフロードではイグアナ(ドイツ語でレグアン)のようにタフであることを示唆する。欧州では2007年末に発売され、生産はトゥーランと同じ独ウォルフスブルグの「Auto 5000 Gmbh」で行われている。
2010年9月から7速DCTを搭載
日本では2008年9月にオフロード寄りの外観を持つ「トラック&フィールド」から発売された。2009年春にはエンジン出力を30ps増の200psに高め、17インチホイールを装着した「スポーツ&スタイル」、秋にはその「スポーツ&スタイル」をベースに各種エアロパーツ、19インチホイール、レザーシート等を装備した「R-Line(アール ライン)」が追加された。ここまでは全て2リッター直噴ターボ、トルコン6AT、「4MOTION」と呼ばれる電子制御フルタイム4WDの組み合わせで、価格は2009年10月発売モデルでそれぞれ371万円、426万円、488万円だった。8エアバッグ、バイキセノンヘッドライト、リヤビューカメラなどは標準装備。
2010年秋にはラインナップを再編。7速DCT(VWではDSGと呼称)を採用した新グレード「ライストン(Leistung)」を設定し、R-Lineは7速DCTを搭載して継続。最高出力は全車170psに統一され、10・15モード燃費は2割ほど向上(9.6~9.7km/L→11.6km/L)。価格はそれぞれ385万円、421万円となった。ちなみにライストンとは効率、性能、能力などを意味するドイツ語で、英語で言えば、おおむねパフォーマンスの意になる。2011年11月現在も、この2グレードで販売中だ。
なお2011年3月のジュネーブショーではフェイスリフト&マイナーチェンジ版が発表されており、海外ではすでに販売中。日本にもそろそろ導入されるはず。

言わば「ミニトゥアレグ」
プラットフォームの前半はパサート、後半はゴルフがベースというティグアンだが、外観にそれらの面影はない。サイズ感はトヨタのRAV4、日産デュアリス、ホンダ CR-Vといった国産ライトSUVに近く、日本でも抵抗のない大きさだが、同時にVWらしい重厚感や生真面目な質感も漂う。要はVWは好きだけどトゥアレグはちょっと大きすぎるし・・・・・・という人の期待に応えるクルマになっている。
なお、試乗した「スポーツ&スタイル」はオフロード色が強い「トラック&フィールド」と異なり、フロントバンパーはエアダム形状となり、タイヤは16インチから17インチに、ルーフレールはシルバー色に、サイドウインドウを囲むモールはメッキ仕上げになる。
SUVというよりMPV
エアコン吹き出し口が8個も並ぶダッシュボードなど、インパネはクロスゴルフ(日本では限定販売)に似ているが、質感は当時デビュー前だった6代目ゴルフよりもワンランク上で、パサートやシロッコ並み。またシート生地一つとっても、VWなりの遊び心が感じられる。
視点と着座位置はゴルフやパサートより高く、見晴らしは実に良好。おかげで多くのSUVに義務化されている左フェンダーの補助ミラーも付けずに済んでいる。死角が小さいこともティグアンの大きな武器の一つだ。
アップライトな姿勢で座る後席には、折り畳み式テーブル、ドリンクホルダー付き大型センターアームレスト、DC12V電源やAC100V電源コンセント(150W)が備わり、SUVというよりもMPV(マルチパーパスヴィークル)的。またラゲッジスペースも広く、荷室アレンジも日本車並みにイージー。週末に遊び道具を積んで出かける人には、かなり便利なはず。
抜群に運転しやすい。乗り心地も良好
試乗したのは2009年に発売された「スポーツ&スタイル」。「トラック&フィールド」よりオンロード寄りだが、エアロパーツで武装した「R-Line」よりスタンダードという、当時の中間グレードに当たる。試乗車は初年度登録から2年で、走行距離は1万5500km。内外装のコンディションはAISの評価で4.5点に留まるが、失点対象の小キズや凹みは目立たず、実際には評価点以上に見える。価格は新車時の422万円に対して318万円だ。
ティグアンには3年前に「トラック&フィールド」に試乗しているが、「スポーツ&スタイル」は今回が初めて。搭載エンジンはいずれも2リッター直噴ターボだが、後者は最高出力が+30psの200psになる。最大トルク(28.6kgm)や車重(1640kg)は同じだ。
試乗してみると、穏やかなパワー感、ごく自然なレスポンス、全域にわたる厚いトルク感といったあたりは「トラック&フィールド」と同じ。高回転まで回して直接比べない限り、両者の差は感じられないと思う。動力性能はいずれも十分で、例えばこの200ps版なら最高速は200km/hの大台に乗るはず。
運転感覚や乗り心地にも、気になるところはまったくない。ステアリングは軽すぎず重すぎず。最小回転半径はゴルフの5.0メートルよりずっと大きく、5.7メートルもあるが、見晴らしが良いせいか、体感的な小回りは思った以上に効く。サスペンション設定は「トラック&フィールド」より快適性重視のはずだが、この点でも直接乗り比べない限り、決定的な差は感じられないと思う。乗っていてとにかくストレスがたまらない。
悪路走破性も自慢
カタログでは「最大43度の急斜面を駆け上がる」と豪語するティグアンだが、確かにその4WDシステム「4MOTION」は、ハルデックス社の電子制御油圧多板クラッチ式ながら、油圧ポンプが機械式から電動式に変更された第4世代で、より適切に(能動的に)前後駆動配分ができるようになっている。またボタン一つで各種制御(スロットルレスポンス、ABS、電子制御デフロック機能など)を切り替える「オフロード」モードも標準装備されている。
もちろん実際の悪路走破性は、対地クリアランス、サスペンションストローク、車重、タイヤなどを含めた総合性能で決まるから、主張を額面通りに受けとめることはできないが、このクラスのSUVでは最も悪路走破性にこだわったモデルの一つと言えるのでは。ちょっとしたオフロードや雪道で心強いのは間違いない。
年式・車名 2009 Volkswagen Tiguan Sports & Style
形式 ABA-5NCAW
寸法 全長4430mm×全幅1810mm×全高1710mm
ホイールベース 2605mm
車重 1640kg
駆動方式 フルタイム4WD
エンジン 1984cc 直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ
最高出力 200ps(147kW) /5100-6000rpm
最大トルク 28.6kgm (280Nm)/ 1700-5000rpm
トランスミッション 6AT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 63L
10・15モード燃費 9.6km/L
タイヤ 235/55R17
最小回転半径 5.7m
販売期間 2009年3月~2010年12月(スポーツ&スタイル)
発売時の新車価格 422万円(消費税込み)
試乗車スペック
初年度登録 2009年10月
試乗日 2011年10月
走行距離 1万5500km
ボディカラー ディープブラック パールエフェクト
備考 ワンオーナー、新車保証残り、ETC付
AIS評価点 4.5点
販売価格 318万円(消費税込み)
ここ最近のVWで一番乗りやすいかも
ティグアンがデビューした2008年当時、フォルクスワーゲングループは、次々に小排気量の直噴ターボエンジンとDCT(VW流に言えばDSG)を搭載するというパワートレイン革命のまっただ中にあった。ゆえにティグアンが発売された時には「どうして6ATなんだろう」と疑問に思ったもの。そこにはいろいろな理由があったと思うが、結局のところ2年後の2010年秋には7速DCTが搭載され、6ATはすでに販売終了となっている。
今回はその6ATに試乗したわけだが、半ば結論を言うと、これが決して悪くない。どころか、むしろ乗りやすい。例えば力強いクリープによる滑らかな発進、アクセルを踏み込んだ時の柔らかなレスポンスはトルコンATならではのものだし、坂道発進も緊張感なく行える。「フォルクスワーゲンで、乗りやすくて、そんなに大きくないSUVタイプが欲しい」という人にとって、これらはけっこう重要なポイントのはず。ある意味、この6AT仕様のティグアンはここ最近のVW車の中で最も乗りやすいクルマの一つだと思う。
もちろん、7速DCTを搭載した現行および次期フェイスリフト版ティグアンも、きっと文句の付けようがないクルマだと思う(残念ながら未試乗だが)。特に走行距離が多い人にとっては、その燃費性能は魅力のはず。ただ、トルコンATのメリットを取るならば、それもティグアンのベストチョイスには違いない。
なお、「トラック&フィールド」、「スポーツ&スタイル」、「R-Line」の三択に関しては、走りの味付けこそ微妙に異なるものの、それらはデザインや装備ほど選択を左右する要素ではないと思う。後者にいくほど高級感は高まるが、「トラック&フィールド」もなかなかカッコ良く、どれを選ぶかは純粋に好み次第と考えていいだろう。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS










