掲載日 : 2012年01月11日
2005 ポルシェ ボクスター S
1996年に初代(986)、2004年に2代目(987)が登場
ボクスターは水平対向6気筒エンジンをミッドシップ(車体中央)に搭載する2人乗りのオープンスポーツ。1996年末に登場した初代(コードネーム986)は、累計生産台数16万台の大ヒット車となった。
今回とりあげるのは、2005年モデルから始まる2代目(987)。構成部品の約80%を変更したモデルで、外観の特徴はヘッドライトユニットの形状が従来の「涙目」(もしくは卵焼き風)ではなく、シンプルな楕円になったことだ。また電動ソフトトップが50km/h以下の走行中でも操作可能になったのも987からとなる(ただしロック操作は手動のまま)。
2009年に7速DCT「PDK」を採用
987のエンジンは改良版の2.7リッター(12ps増の240ps)と3.2リッター(20ps増の280ps)でスタート。2.7リッターには5MTと5AT(ティプトロニック)、3.2リッターのボクスターSには6MTと5ATが設定された。2006年の途中からボクスターSは3.4リッターとなり、またこの頃からクーペタイプの兄弟車「ケイマン」が登場している。
大きな変化があったのは2009年モデル。従来の5ATが廃止され、代わりに7速DCT、すなわちPDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)を採用。同時に標準モデルの排気量が2.9リッター(255ps)となり、そのMTを6速化。ボクスターSは3387ccから直噴の3436cc(310ps)になった。また2010年には新グレードとして、エンジンを320psとし、アルミ製ドアや専用シート、手動式の幌などで軽量化した「ボクスタースパイダー」(6MTと7速PDK)が追加されている。
なお、すでに987型ボクスターは登場から7年が経過しており、2012年中には3代目(コードネームは若返って981型)が発表されそうだ。

ヘッドライト形状が986と987の識別点
987は言わば986のビッグマイナーチェンジ版だが、両者はヘッドライトユニットのほか、バンパーやボディ外板も別物となり、一目見るだけで何となく見分けが付く。全体のクオリティ感が高いのは987の方だが、オープンでもクローズドでもスタイリングがいいのは両者に共通。ヘッドライトのデザインに関しては好み次第だろう。
なおボクスターSと標準モデルとの違いは、フロントバンパー下部のスリットの有無、2本出しマフラー、ブレーキ、そしてタイヤ&ホイールなど。標準モデルは前輪が205/55ZR17、後輪が235/50ZR17で、Sではそれぞれ235/40ZR18、265/40ZR18と一回り大きくなる。
986に対して大幅に質感アップ。実用性も高い
デザイン的には同世代の911(997型)に似た987のインテリア。質感についてはこの2005年型で、十分なレベルに達したと言っていいだろう。
室内空間は前後および横方向に広く、大人二人が乗っても狭苦しさはない。乗降性もスポーツカーとしては悪くない部類に入る。さらにミッドシップ車では狭くなりがちなトランク容量もフロントとリアで計280リッターを確保。こうした実用性の高さもポルシェらしいところだ。
フラットシックス&ミッドシップを満喫
試乗したのは2005年モデルのボクスターS(ティプトロニック)。約6年半落ちだが、走行距離は2万8900kmとまずまず少なく、内外装コンディションも良好。販売価格は、新車時の728万円に対して約半分の360万7000円。
試乗車はバッテリーが上がり気味だったので、ジャンプしてエンジンを始動。タイヤの空気圧も規定値まできっちり補充して走り出した。背後から聞こえてくるウォーンと唸るようなサウンドが、ボクスターの楽しいところ。エンジンがボディのリアエンドにある911より音源は近いが、理論上は完全バランスのフラットシックスゆえ、不快な振動はない。
この年式のボクスターSが搭載するのは、排気量3179ccの3.2リッターユニット。最高出力280ps(206kW)、最大トルク32.6kgm (320Nm)という数値は、空冷最後の911(993)に匹敵する立派なもの。ただし試乗車のようなティプトロニックなら、運転はまったく難しくない。初めてポルシェに乗る人でも、ものの15分で慣れるはずだ。
また小回りは効くし(最小回転半径は5.2メートル)、エンジンはトルクフルだし、ブレーキもよく効く。クローズド時には斜め後方の死角が大きいこと、そして最低地上高が低いことに気を付ければ、日常の足としても気軽に乗れる。
試乗車の18インチタイヤは摩耗や劣化がかなり進行していたが(特にショルダー部)、乗り心地に大きな不満はなく、直進安定性も試せた範囲では悪くなかった。ボディやシャシーにもヘタリ感はなし。またミッドシップならではのボディ全体の一体感、低重心による安定感などは、他のオープンスポーツではなかなか味わえないもの。これは911も含めて、スポーツカーとして専用設計されたクルマの強みだ。
年式・車名 2005 Porsche Boxster S
形式 -
寸法 全長4330mm×全幅1800mm×全高1295mm
ホイールベース 2415mm
車重 1410kg
駆動方式 MR(ミッドシップ・後輪駆動)
エンジン 3179cc 水平対向6気筒DOHC・4バルブ (水冷)
最高出力 280ps(206kW) /6200rpm
最大トルク 32.6kgm (320Nm)/ 4700-6000rpm
トランスミッション 5速AT
使用燃料/容量 プレミアムガソリン / 64L
10・15モード燃費 -km/L
タイヤ 前:235/40ZR18・後:265/40ZR18
最小回転半径 5.2m
販売期間 2004年12月~2008年12月(987の2.7・5ATモデル)
発売時の新車価格 728万円(2004年12月発売モデルのS・5AT)
試乗車スペック
初年度登録 2005年4月
試乗日 2011年12月
走行距離 2万8900km
ボディカラー ミッドナイトブルーメタリック
備考 ETC、スマートレコーダー付
AIS評価点 4.5点
販売価格 360万7000円(消費税込み)
「最新は最良」。しかし986後期型もおすすめ
「最新のポルシェは最良のポルシェ」というフレーズはあまりに有名だが、これはボクスターにもそっくり当てはまる。特に7速PDKが搭載された2009年以降のモデルは、それまでのティプトロニックとは別物。変速は素速く、ショックは皆無、レスポンスは鋭く、燃費もいい。そして同じPDKでも、2011年モデルはさらにスムーズだと聞く。最新のボクスターもまた最良のボクスターだ。
ただし新車のボクスターは2.9リッターモデルのPDKで615万円もするし、Uカーでも高値安定物件。ここはやはり、お買い得感のある2008年以前のモデルで探してみるのがUカー選びの醍醐味?だろう。
そこでおすすめしたいのが、リアウインドウがガラス製になってからの986後期型(2003~2004年モデル)だ。もちろん今回試乗したような987前期型(2005~2008年モデル)の方が人気はあるし、進化もしているが、その場合は300万円以上が相場。それに対して986なら今や200万円台が普通だ。両者の違いは主に見た目(デザイン)。さらに細かいことを言えば、走行中のトップ開閉は986では出来ないが、たいていは停止中に行うので大したデメリットではない。それに986の涙目ヘッドライトだって、なかなか個性的でいいではないか。
なお2002年以前のボクスターも最高に乗って楽しいクルマだが、いかんせんビニール製リアウインドウの扱いには注意が必要で、経年劣化による透明度の低下や硬化による割れが避けられない。また純正のビニール製とガラス製では幌の構造が異なるため、両者には互換性もない。もちろん「ビニールだって構わない。スポーツカーなんだから軽量なのが一番」という場合は、この限りではない。
(MT派でなければ)2.7のティプトロニック
エンジンに関しては、2.7リッターでもポルシェらしい切れ味は味わえるので、何の不満もないはず。また変速機は、もちろんMT派ならMTで決まりだが、ポルシェをオシャレに乗るのが目的ならティプトロニックでOK。そもそも今やポルシェでも台数的には圧倒的にティプトロニックがMTを上回る状況だから、コンディションのいいMT車を見つけるのはけっこう難しい。というわけで、一般論としては2.7のティプトロニックをおすすめしたい。もちろん911に迫る高性能感を求めるならSの6MTがいいが、そんな方にはいっそ911という選択もある。
また最近は911やボクスターでも普通に右ハンドルが用意されているが、実際にデリバリーされるのは相変わらず左ハンドルが多い。「日本で乗るなら右ハンドルが便利」というのが一般的な感覚だが、少なくとも911やボクスターの場合、右ハンドルにこだわって選択肢を狭めるのは勿体ない話だ。これには右ハンドルのペダルレイアウトが、いまだに(空冷時代の911ほどではないが)若干オフセットされているということもある。
最後に、これは購入前に判断するのは難しいが、ボクスターなどちょっと旧い水冷フラットシックス車で、吹け上がりが重々しく感じられる場合は、ダイレクトイグニッションなどの点火系やセンサー類を新品に交換すると本来の性能を取り戻すことがあるようだ。そのまま気付かず乗ってしまう場合も多いようだが、思い当たる節があれば試してみるといいだろう。本来のボクスターは2.7にしろSにしろ、爽快な吹け上がりと鋭いレスポンスが楽しめる。ぜひそのフィーリングを味わってみて欲しい。
Text:丹羽 圭(Kei Niwa), DAYS
Photo:DAYS










